樟舎の本、”おすそわけ Kae’s note 2019, spring-autumn”の刊行を期した企画展を、2021年5月1日から5月16日まで開催している。松江の古本屋さん冬營舎と、木次のカフェ・オリゼ、ふたつの会場にて。題して「伊澤加恵、あしもとの世界と小さな作品展」。
これはその弥縫的記録である。
まずは、虹の話からしてみようとおもう
虹を指差すと、不吉なことが起こる。疫病、災害、戦乱……。だから、虹をみつけたとき、決して指であそこと指差したりしてはならない。小さなころに諭された人はもういない(たぶん)のだから、その昔、人々は虹に対してどんな感情を抱いていたのかを知ることは、少なくとも確定的には不可能となった。
それでも知りたいと思うとき、そんなときにはやってみればよい。焼畑をやることも、たぶん同じ線の上にある。樟舎がつくる(つくった・つくりつづけている)伊澤加恵のちょっと変わった絵本『おすそわけ』も同じだ。
虹のぼっておもうのは、虹の根っこは ということ。
本のいちばんうしろ、ページをまたがって記されている一文である。
ホワイトスペースには、文字が入っている、はずなのだが、写真で覆い隠されたその後ろに、「それ」はあるのかどうか……。
編者は、少々というか、数日考えた結果、あることをしたのだが、さてそのこたえは?
がしてみれば、わかることだが、果たしてそれは本当にこたえなのか。
それがもし、虹を指差す行為であり、災いをこの世界にもたらすものであると、その再現をはかるべく編者である私が仕掛けたのであれば、それはめくってはならないものとなってしまうだろうし。ただ、めくってみようとする人、見てしまう人がいることは折込み済みである。むしろ、この本の楽しみは、どうなっているんだろうとあれこれいじったり、考えたりするところにあって、ここをはがしてみたいという好奇心はまっとうで自然なものでもある。
さて、どうなっているかは、はがしてみればわかりますが、さて、あなたははがしますか、それともそのままにしますか?