本の記録〜2019年2月1日

県立図書館へ。
地誌は大山あがりとトロヘン・ホトホト、そしてトンドさんについて網羅的に資料をあげていくことにする。思っていたより時間がかかる、かもしらん。

●借りており、精読もしくは調べるもの
†. 木次町誌編纂委員会編,1972『木次町誌』(木次町)
†. 黒沢長顕,斎藤豊仙,1717;享保2『雲陽誌』(大日本地誌体系,昭和46,雄山閣)
†. 仁多郡役所編纂,大正6『島根県仁多郡誌』(臨川書店,1986)
†. D.モントゴメリー,2017『土,牛,微生物』(片岡夏実訳,築地書館,2018)
†. 宮本常一,1977『宮本常一著作集24・食生活雑考』(未来社)
†. コーネリス・ドヴァール,2013『パースの哲学について本当のことを知りたい人のために』(大沢秀介訳,勁草書房,2017)
†. 根本正之,2014『雑草社会がつくる日本らしい自然』(築地書館)
†. 大庭良美,1985『家郷七十年 村の生活誌』(未来社)

●複写したもの…のちほど加筆…

●閲覧し、再読予定のもの
†. 中村重正,2000『菌食の民俗誌―マコモと黒穂菌の利用』(八坂書房)
マコモタケビジネスが流行っているようだが実際のところどうなんだろうかということ。そして現在国内で栽培されているマコモダケはどこからきたのかということ。このふたつがもやもやとしたままだったので、少しばかり調べてみたかったのだ。詳細はまた次回。まず、後者について。どうやらある時期に中国や台湾から移入されたもののようだ。少なくとも、日本に古くから自生している(た)マコモとは異なる。ウィキ等で万葉集の時代からあったというのはマコモダケではない。万葉集の中にマコモダケの記載はなく、コモのみ。
なお、北米では持ち込みが禁止。まぁ、菌ですし。日本はよくも悪くも甘いのだろうが、変異した菌が繁殖しはじめたら手に負えんだろうとは思う。
農文協から栽培法についての書籍も執筆している三重県中央農業改良普及センターの西嶋政和氏は、〈クボタeプロジェクト 再生農地での作物の育て方>マコモ(マコモダケ)〉のなかで、次のように述べている。

・古くから日本に自生しているものは、食用には適しません。
・食用の栽培種として、中国などから導入し改良された系統が栽培されています。

そして、マコモダケの黒穂菌からとれる顔料をお歯黒に使っていたというウィキペディアはじめウェブのそこここで見られる記述も誤りであろう。少なくとも日本の話ではない。

小山 鐵夫、山崎 耕宇が執筆した平凡社世界大百科のマコモの項目には次のような記述がある。

《マコモの茎の先つまり菰角に黒穂病菌の1種のUstilago esculenta P.Henningsが寄生すると,茎がたけのこを小さくしたような形に太って軟化し,花が出ない。これがまこも竹で,漢名で茭白筍(こうはくじゆん)といい,台湾や中国大陸南部ではこれが栽培される。料理で珍重され,缶詰や冷凍にして輸出もされる。この菰角に黒穂菌の胞子ができると,黒い粉が豊富に出るが,これを絵具にしたり,油脂に混ぜて化粧の眉引きに使ったりしたこともある。また葉や茎で盂蘭盆(うらぼん)の時の祭壇に敷くござを編んだりした。マコモの根と果実は中国で薬用とされ,心臓病や利尿の効があるという》

また、湯浅浩史が執筆した小学館の『日本大百科全書』のマコモの項目には次のようにも。

《マコモの種子は米に先だつ在来の穀粒で、縄文中期の遺跡である千葉県高根木戸貝塚や海老が作り貝塚の、食糧を蓄えたとみられる小竪穴(たてあな)や土器の中から種子が検出されている。江戸時代にも一部では食糧にされていた。『殖産略説』に、美濃国(みののくに)多芸(たぎ)郡有尾村の戸長による菰米飯炊方(こもまいめしのたきかた)、菰米団子製法などの「菰米取調書」の記録がある。
中国ではマコモの種子を菰米とよび、古くは『周礼(しゅらい)』(春秋時代)のなかに供御五飯の一つとして記載がある。また『斉民要術(せいみんようじゅつ)』(6世紀)には菰飯の作り方の記述がある。マコモの子実は彫胡(ちょうこ)ともよばれ、唐の杜甫(とほ)は「滑憶彫胡香聞錦帯羹」と歌った。台湾には秋来菰米(秋がきたらマコモ飯を食べる、という意味)の風習が近年まであった。
マコモタケは『斉民要術』に取り上げられており、明代には野菜として栽培が広がった。また、『万葉集』にはマコモを詠み込んだ歌が22首載り、まこも刈りやその舟を詠んだ歌もある。葉の利用も古くは重要で葉は、莚、薦(こも)や畳に編まれ、菰枕(こもまくら)、雪国の菰靴(こもぐつ)、ちまきに使われた。
江戸時代、所によっては真菰高(まこもだか)と称する税の対象にされた。
マコモタケの黒い胞子はまこも墨とよばれ、鎌倉彫の古色づけとして明治初年以来利用されている。》

ほか、ウェブサイトの中では「カンポンボーイの果物歳時記」のマコモの記事が詳細にして精確で、またの機会に掘り下げてみたい。

†. 浜田信夫,2013『人類とカビの歴史 闘いと共生と』(朝日選書)

†. 菱川晶子,2018『増補版 狼の民俗学―人獣交渉史の研究』(東京大学出版会)…4月刊行の原稿執筆資料として考えてきたのだが、テーマそのものを見送ることにした。

1月の本とスパイス〜やまたのをろちはワインを飲んだのか?

やまたのをろちはワインを飲んだのか〜マイケル・ポーラン『人間は料理をする・下』etc.(本の話#0016)


第16回の本とスパイス、その背景などについて少々。

昨年の秋から、木次の山野で、阿井の山野で、山葡萄を探している。エビヅル、サンカクヅルを含めたブドウ科で果実が食せるものを。これが、びっくりするくらいに見当たらない。「松江の花図鑑」のサイトをみれば、サンカクヅルエビヅル、は松江市内のいずこかに。対象を県内にひろげてみても、全域で見られるようなのに。
なぜだろう。どうしてだろう。探し方も見つけ方も悪いのだろうと思っていた。だがしかし、ブドウ科には詳しい、というより専門家たる葡萄園のS氏も「探しているけどなぜかない」と。
頭の中に「山ブドウ」の文字が浮かんでは消える日々が続き、雪の季節にもなり、また来年の宿題かと思っていた頃、東京で髙山氏に会う機会を得たので、表題の件を聞いてみたのだ。
いや、山葡萄探しから飛躍しすぎた。
その手前、そもそもなぜ山葡萄かということについて述べなければつながらないのだが、長くなる。ここでは自分への備忘も含めふたつをあげておく。
◉2017年の採集草木調査の一断片としてこんなことを言っていた
奥出雲山村塾のfacebookページ投稿
◉山葡萄をはじめ手をのばせば食べられるものが山にはたくさんあったというHさんの思い出。これについては、髙山宗東「八鹽折酒」考を。
続きはまた。
古事記を読むとはどういうことか。なかでもやまたのをろちをどう読むか。そしてマイケル・ポーランが「料理」をどうとらえているか。をろちとの関係は。と続く。

本の記録〜2018年12月24日

出雲市立中央図書館にて
◆借りた本
†.木村茂光編,2010『日本農業史』(吉川弘文館)
†.松山善之助,山下道弘,矢ヶ崎和弘,佐藤久泰,2003『新特産シリーズ・黒ダイズ』(農文協)
†.原田信男2006『コメを選んだ日本の歴史』(文春新書)

・黒大豆は来年の作付けのために。赤名黒姫丸を栽培する予定ゆえ。赤名黒姫丸は、丹波黒の変異から赤名地区で育種し固定種としたもの。
・木村茂光の『日本農業史』は貸出延長して要熟読のため。手元においておきたいくらい。
・原田信男の『コメを選んだ日本人』は他著との重複も多いが、まとまったものとして便がよいと思い。ずずっと通読したい。

本の記録〜2018年10月24日

島根県立図書館にて。
◆借りた本
◉佐藤洋一郎,加藤鎌司,2010『麦の自然史ー人と自然が育んだムギ農耕』(北海道大学出版局)… ムギ栽培について、とりわけ日本でのムギ栽培について知りたいのだが、あるようでないのだよねあと日頃思っていたところ、開架で見つけた。とりわけ、第13章 大田正次「日常の生活が育んだ在来コムギの品種多様性〜難脱穀性コムギの遺存的栽培と伝統的利用をめぐって」は、脱穀・籾摺り・製粉をどうしようかと思案しているスペルト小麦の利用について、資するものである。大田氏によるイラン北部、スペイン北部、中央ヨーロッパでの調査が簡潔に触れられている。20年ばかり前の調査の再録であるようだが、栽培が途絶えていない地域では、「手間だけれど」自家用につくる、主となったパン小麦よりも美味しいから、親がつくってきたから、という動機の表明があることが興味深い。日本の焼畑における在来蕎麦やカブなどと共通する。しかしあるいは、これは調査者特有の認識フレームがそういう言説を誘導するのかもしれない。
特殊な石臼で「籾」をとるというのは、この調査で出てくるどの地域でもそうだ。脱穀はイラン北部の場合は、手摘みで穂だけをとり、スペイン北部だと千歯こぎに似た刃物でとる方式。粉にしてパンにすることのほか、粒食の文化もあるというのは初見であって、ここを端緒として小麦の粒食についてもう少し掘り下げてみれそうだ。
またトリビアルではあるが、知らなったこと。欧米圏ではムギにあたる単語が存在しないということ。中国・日本独自ということなのか!? JKナレッジで簡単にあたってみるに、確かにそう。ウェブリオの翻訳では麦の英訳は、wheat, barley, oats,rye, etc.。小麦はwheat、大麦はbarley、ryeはライ麦であって、これらを総称する「麦」なる概念はないということだ。平凡社世界大百科は「〈麦〉は,日本や中国などで使用されてきた多面的な内容をもつ独特な用語で,これに相当することばは欧米にはない」としている。

◉藤原俊六郎,2013『新版・図解土壌の基礎知識』(農文協)……一度しっかり学びたいものであるものの、手につかず、借りるのは2回め。今回はとりわけグライ土について確かめるべく。

◉畠山剛,『新版縄文人の末裔たちーヒエと木の実の生活史』(彩流社)……これを手に岩手県岩泉を訪れたいと思うほどの書。畠山氏、ご存命であれば、85歳(1933年、昭和8年生まれ)。

◉1994『岩波講座日本通史別巻2ー地域史研究の現状と課題』(岩波書店)……宮本常一が東北農村における土間住まいについて著している文献を参照したく検索したものだが、あきらかに違う。とはいえ、さらっとでも読んでおきたい事項が満載ゆえ借りてきた。香月洋一郎の「民俗学と地域研究」については、少々思うところもあり、改めて加筆の予定。

◆参照図書

◉『柿木村史 第2巻』……1.吉賀記について、ここまで詳述されているものをはじめてみた。資料として後日改めて複写するか、貸出されているものがあれば、そちらを。

 

本の記録〜2018年10月8日

松江市立図書館にて。
記録を忘れていたので改めて。

◉奥野克巳,2018『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(亜紀書房)
◉ダニエル・L.エヴェレット『ピダハンー「言語本能」を超える文化と世界観』(屋代通子・2012訳;みすず書房)
◉栗栖健,2004『日本人とオオカミ 世界でも特異なその関係と歴史』(雄山閣)